2026.9.8

  • 事業者

面白い!が原動力
55歳からのものづくり

ささも/ささきぷらすちっく

SASAMO/ササキプラスチック 

2018年にササキプラスチックに山崎誠喜さんが入社したのを機に本格始動したプロジェクト。ササキプラスチックが医療機器や自動車の開発によって培った素材への知見や自社の所有する切削機、3Dプリンターなどの機械を活用し、1点物の受注生産やフィギュアなどの製造・販売を手がける。

2026.9.8

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面白い!が原動力
55歳からのものづくり

ささも/ささきぷらすちっく

SASAMO/ササキプラスチック 

2018年にササキプラスチックに山崎誠喜さんが入社したのを機に本格始動したプロジェクト。ササキプラスチックが医療機器や自動車の開発によって培った素材への知見や自社の所有する切削機、3Dプリンターなどの機械を活用し、1点物の受注生産やフィギュアなどの製造・販売を手がける。

かつては子どもの遊びだったガチャ(カプセルトイ)ですが、今では大人や外国人観光客も虜にしています。じつは大槌にも、大人に人気のガチャがあること、ご存じでしょうか。その名も「フィギュア 三陸海物語」。このクスっと笑えるフィギュアの生みの親は、町内のササキプラスチックの新規事業「SASAMO」の造形師・山崎誠喜さん。50歳半ばのキャリアチェンジから、持ち前の好奇心と探求心で、ものづくりの新境地を開拓し続けます。

「できませんはございません!」
入社を決意

「あわびトシロ」、「イカの口(生)」、「しゅうり貝(ムール貝)のむき身」……まるで大槌町内のスーパーの鮮魚売り場のような 品揃え。しかし、ここは大槌町吉里吉里にあるSASAMO(ササモ)の工房。色合いも光沢もまるで本物のようですが、ミニチュアサイズ。エポキシ樹脂でできています。

この精緻な海の幸フィギュアを制作している山崎さんは、55歳にしてこの世界に入った遅咲きの職人。何かにつけて「おもしろい」が口癖で、好奇心旺盛。社会人になって以来、地元の山田町や宮古市で葬儀業や飲食店の経営・経理など、ものづくりとは異なる世界を歩んできましたが、「子どもたちが大きくなり自立が見えてきたので、知らない地域でやったことのない仕事をしてみるのも面白いんじゃないかと思い、仕事を探して応募しました」

それまで知人の紹介で転職したことはあったものの、長らく就職活動をしていなかった山崎さん。「ちゃんとした就職活動をしてみたい」と思い、ハローワークに通って転職にチャレンジしましたが、年齢を理由に8社から断られ、その後にハローワークで紹介されたのがササキプラスチックの求人でした。

会社のサイトを開くと「できませんはございません!」の文字が目に飛び込んできました。「本当に鳥肌が立つくらいにゾクゾクしたというか、ここだ!と直感しました」。これが運命の出会いになりました。

ササキプラスチックは、高度な切削技術によるプラスチックやアルミの加工を得意とする会社で、自動車部品や医療機器開発のための試作モデルを手掛けてきましたが、2000年代後半の経済不況と東日本大震災をきっかけに、大手企業からの受託の仕事だけではなく、高い技術力を活かして地域から喜ばれる仕事もしたいと考え、 一般向けの商品開発にも取り組もうとしているタイミングでした。

面接の際に山崎さんが持参したのが、趣味の釣りで魚拓の代わりに作っていた「魚拓ブローチ」。これを面接で見せたところ、発想のユニークさと完成度の高さが佐々木弘樹社長の目に留まり、「一緒に面白いものを作りませんか」と採用が決定。造形師としての新しい人生がスタートしました。
「あわびトシロ」、「イカの口(生)」、「しゅうり貝(ムール貝)のむき身」……まるで大槌町内のスーパーの鮮魚売り場のような 品揃え。しかし、ここは大槌町吉里吉里にあるSASAMO(ササモ)の工房。色合いも光沢もまるで本物のようですが、ミニチュアサイズ。エポキシ樹脂でできています。

この精緻な海の幸フィギュアを制作している山崎さんは、55歳にしてこの世界に入った遅咲きの職人。何かにつけて「おもしろい」が口癖で、好奇心旺盛。社会人になって以来、地元の山田町や宮古市で葬儀業や飲食店の経営・経理など、ものづくりとは異なる世界を歩んできましたが、「子どもたちが大きくなり自立が見えてきたので、知らない地域でやったことのない仕事をしてみるのも面白いんじゃないかと思い、仕事を探して応募しました」

それまで知人の紹介で転職したことはあったものの、長らく就職活動をしていなかった山崎さん。「ちゃんとした就職活動をしてみたい」と思い、ハローワークに通って転職にチャレンジしましたが、年齢を理由に8社から断られ、その後にハローワークで紹介されたのがササキプラスチックの求人でした。

会社のサイトを開くと「できませんはございません!」の文字が目に飛び込んできました。「本当に鳥肌が立つくらいにゾクゾクしたというか、ここだ!と直感しました」。これが運命の出会いになりました。

ササキプラスチックは、高度な切削技術によるプラスチックやアルミの加工を得意とする会社で、自動車部品や医療機器開発のための試作モデルを手掛けてきましたが、2000年代後半の経済不況と東日本大震災をきっかけに、大手企業からの受託の仕事だけではなく、高い技術力を活かして地域から喜ばれる仕事もしたいと考え、 一般向けの商品開発にも取り組もうとしているタイミングでした。

面接の際に山崎さんが持参したのが、趣味の釣りで魚拓の代わりに作っていた「魚拓ブローチ」。これを面接で見せたところ、発想のユニークさと完成度の高さが佐々木弘樹社長の目に留まり、「一緒に面白いものを作りませんか」と採用が決定。造形師としての新しい人生がスタートしました。

デビュー作を機に
次々舞い込む依頼

「面白いものを作りたい!」その想いは会社側、山崎さん、双方に共通していましたが、どちらも具体的なアイデアはありませんでした。「雇ってくれた会社に恩返しするために、少しでも早く商品を」と意気込んだ山崎さん。参加した飲み会の席で佐々木社長が「車のダッシュボードに飾れるものが欲しい」と漏らすのを聞き逃しませんでした。

佐々木社長の漏らした言葉をきっかけに誕生したのが、造形師・山崎さんのデビュー作となる立体の交通安全御守でした。毎年、初詣スポットとしてにぎわう釜石大観音でお披露目したいと考え、観音様とお地蔵様を象った御守を企画しました。

趣味でブローチを作っていたとはいえ、100個単位の商品を制作・販売するのはもちろん初めての経験。自社が所有する機械で型を作り、フィギュアを成形し、塗装する……この一連の作業にどのくらいの時間とコストがかかるのか、想像も着かない状態からのスタートでした。

しかし「できませんはございません!」の精神で、ホームセンターで買い揃えた道具を駆使して試作を重ね、なんとか完成にこぎつけ、祈祷を受けた御守を三が日で500個販売することができました。極寒の中、観音様の足元での販売に立った山崎さんは「お客さんから笑ってもらえて、ひと安心しました」。

この御守が呼び水となり、山崎さんの評判を知った人たちからの相談が舞い込むように。そのひとつが、岩手県二戸市の枋ノ木(こぶのき)神社の御守。もうひとつが、町内赤浜地区にある東京大学大気海洋研究所大槌海洋センターからの依頼で、同研究所の大土直哉助教が発見した新種のカニ・ オオヨツハモガニのフィギュアを制作するというものでした。

実物を再現する原寸大のフィギュアは、シンプルな形の観音像と比べると、格段に難しいものでした。舞い込んだ依頼をお客さんの満足いく出来栄えで仕上げるには、まだまだ研究開発の経験が不足していたのです。
山崎さんは、なんとしても期待に応えるべく試行錯誤を続けましたが、このままでは約束の納期を守れない……窮地に陥ってしまいました。

そんな山崎さんを救ったのは、奇しくも新型コロナウイルス感染症の大流行。カニのフィギュアをお披露目する予定だった大槌海洋センターの式典など、あらゆる行事が延期になり、意図せぬ形で山崎さんの納品期限も延期になりました。

「これのおかげで救われたんです」と山崎さんが差し出した掌には通称「マスカケ線」と呼ばれる珍しい手相が。天下取りの相とも呼ばれるこの手相に守られたのか、1年という猶予を与えられ、すべて新たな納期を守って納品することができました。
「面白いものを作りたい!」その想いは会社側、山崎さん、双方に共通していましたが、どちらも具体的なアイデアはありませんでした。「雇ってくれた会社に恩返しするために、少しでも早く商品を」と意気込んだ山崎さん。参加した飲み会の席で佐々木社長が「車のダッシュボードに飾れるものが欲しい」と漏らすのを聞き逃しませんでした。

佐々木社長の漏らした言葉をきっかけに誕生したのが、造形師・山崎さんのデビュー作となる立体の交通安全御守でした。毎年、初詣スポットとしてにぎわう釜石大観音でお披露目したいと考え、観音様とお地蔵様を象った御守を企画しました。

趣味でブローチを作っていたとはいえ、100個単位の商品を制作・販売するのはもちろん初めての経験。自社が所有する機械で型を作り、フィギュアを成形し、塗装する……この一連の作業にどのくらいの時間とコストがかかるのか、想像も着かない状態からのスタートでした。

しかし「できませんはございません!」の精神で、ホームセンターで買い揃えた道具を駆使して試作を重ね、なんとか完成にこぎつけ、祈祷を受けた御守を三が日で500個販売することができました。極寒の中、観音様の足元での販売に立った山崎さんは「お客さんから笑ってもらえて、ひと安心しました」。

この御守が呼び水となり、山崎さんの評判を知った人たちからの相談が舞い込むように。そのひとつが、岩手県二戸市の枋ノ木(こぶのき)神社の御守。もうひとつが、町内赤浜地区にある東京大学大気海洋研究所大槌海洋センターからの依頼で、同研究所の大土直哉助教が発見した新種のカニ・ オオヨツハモガニのフィギュアを制作するというものでした。

実物を再現する原寸大のフィギュアは、シンプルな形の観音像と比べると、格段に難しいものでした。舞い込んだ依頼をお客さんの満足いく出来栄えで仕上げるには、まだまだ研究開発の経験が不足していたのです。
山崎さんは、なんとしても期待に応えるべく試行錯誤を続けましたが、このままでは約束の納期を守れない……窮地に陥ってしまいました。

そんな山崎さんを救ったのは、奇しくも新型コロナウイルス感染症の大流行。カニのフィギュアをお披露目する予定だった大槌海洋センターの式典など、あらゆる行事が延期になり、意図せぬ形で山崎さんの納品期限も延期になりました。

「これのおかげで救われたんです」と山崎さんが差し出した掌には通称「マスカケ線」と呼ばれる珍しい手相が。天下取りの相とも呼ばれるこの手相に守られたのか、1年という猶予を与えられ、すべて新たな納期を守って納品することができました。

「三陸海物語」の誕生。
深まる素材への探求心

無事に大きな依頼を成し遂げた山崎さんは、満を持して自社製品の開発に着手。まずは、人は何を見て「面白い!」と感じるのかを掘り下げて考えてみることにしました。行きついた答えは「“知っているもの”にこそ面白さがある」ということ。「まったく何か分からないものを見ると、人は面白さよりも恐ろしさを感じるものです。見慣れたものなのに、何かが違ったり、意表を突かれたりすると、人は面白い!と感じるんじゃないかと考えたんです」

そこから生まれたのが、大槌町を代表する特産品“新巻鮭”のフィギュア。このうろこを表現するにも思いがけない苦労があったと言います。「最初はストッキングを使ってみたり、ネットを使ってみたり、色々試したんです。でも、どれもしっくりこなくて」。試行錯誤の末にたどり着いたのが、花嫁さんのウェディングベールのレース生地でした。

最初は、寒風にさらした後の乾いた風合いを表現してみました。「これがまったく面白くないんです。じゃあ、塩に漬けて干したばかりの生臭さそうな鮭にしよう、と」。塗装を変えてレアな風合いに仕上げると、これが周囲に大受け。さらにネコに食べられた後の頭と尻尾にしたらどうだろう……面白さを追求する山崎さんの開発の手は止まりません。

試作品を見た町観光協会から「今流行している大人向けのガチャにしてみては」との提案を受け、大槌の海産物をカプセルに収まるサイズで表現した「フィギュア 三陸海物語」が誕生しました。

発売されるやいなや、商品は狙い通り大ヒット。「東京にいる娘に送りたい」「帰省する友だちにあげたい」と地元の人が買い求め、大槌駅に設置したガチャには、目当ての海産物を狙って、何度も回し続ける大人の姿が見られるように。精巧かつユーモラスな海の幸のフィギュアは、すっかり評判になりました。

「面白い」を追求する山崎さんのものづくりは、フィギュアという素材の枠にとどまりません。エポキシ樹脂だけでなく、木材、アクリル、針金、布……「よく知っている素材と素材の組み合わせも面白い」と手応えを感じています。

最近、夢中になっているのは木材。町内の老舗民宿・さんずろ家の看板や枋ノ木神社の扁額など、依頼を受けて、木材に名称の文字を刻み、その名を知らしめる看板としての命を宿します。最新の商品は、無垢材で作る小さな骨壺。長年、葬儀の仕事に携わった経験から、遺骨の一部を自宅で供養したい人たちのために、アクリルの台座とお地蔵様、無垢材の骨壺という手のひらサイズの手許供養のセットを開発しました。

樹脂や木という素材と向き合いながらも、いつも山崎さんの心の中には商品を手に取るお客さんがいます。SASAMOの商品や技術力を伝えるため、大槌町内外のさまざまなイベントへの出展を重ねていますが、中でも大槌のお客さんの存在は格別だそう。「大槌の人の笑顔は、他の場所の人たちの笑顔とはひと味違うんです。これからも大槌の人に驚いてもらい、笑ってもらえるものを作り続けたいです」
(2026年7月取材)
無事に大きな依頼を成し遂げた山崎さんは、満を持して自社製品の開発に着手。まずは、人は何を見て「面白い!」と感じるのかを掘り下げて考えてみることにしました。行きついた答えは「“知っているもの”にこそ面白さがある」ということ。「まったく何か分からないものを見ると、人は面白さよりも恐ろしさを感じるものです。見慣れたものなのに、何かが違ったり、意表を突かれたりすると、人は面白い!と感じるんじゃないかと考えたんです」

そこから生まれたのが、大槌町を代表する特産品“新巻鮭”のフィギュア。このうろこを表現するにも思いがけない苦労があったと言います。「最初はストッキングを使ってみたり、ネットを使ってみたり、色々試したんです。でも、どれもしっくりこなくて」。試行錯誤の末にたどり着いたのが、花嫁さんのウェディングベールのレース生地でした。

最初は、寒風にさらした後の乾いた風合いを表現してみました。「これがまったく面白くないんです。じゃあ、塩に漬けて干したばかりの生臭さそうな鮭にしよう、と」。塗装を変えてレアな風合いに仕上げると、これが周囲に大受け。さらにネコに食べられた後の頭と尻尾にしたらどうだろう……面白さを追求する山崎さんの開発の手は止まりません。

試作品を見た町観光協会から「今流行している大人向けのガチャにしてみては」との提案を受け、大槌の海産物をカプセルに収まるサイズで表現した「フィギュア 三陸海物語」が誕生しました。

発売されるやいなや、商品は狙い通り大ヒット。「東京にいる娘に送りたい」「帰省する友だちにあげたい」と地元の人が買い求め、大槌駅に設置したガチャには、目当ての海産物を狙って、何度も回し続ける大人の姿が見られるように。精巧かつユーモラスな海の幸のフィギュアは、すっかり評判になりました。

「面白い」を追求する山崎さんのものづくりは、フィギュアという素材の枠にとどまりません。エポキシ樹脂だけでなく、木材、アクリル、針金、布……「よく知っている素材と素材の組み合わせも面白い」と手応えを感じています。

最近、夢中になっているのは木材。町内の老舗民宿・さんずろ家の看板や枋ノ木神社の扁額など、依頼を受けて、木材に名称の文字を刻み、その名を知らしめる看板としての命を宿します。最新の商品は、無垢材で作る小さな骨壺。長年、葬儀の仕事に携わった経験から、遺骨の一部を自宅で供養したい人たちのために、アクリルの台座とお地蔵様、無垢材の骨壺という手のひらサイズの手許供養のセットを開発しました。

樹脂や木という素材と向き合いながらも、いつも山崎さんの心の中には商品を手に取るお客さんがいます。SASAMOの商品や技術力を伝えるため、大槌町内外のさまざまなイベントへの出展を重ねていますが、中でも大槌のお客さんの存在は格別だそう。「大槌の人の笑顔は、他の場所の人たちの笑顔とはひと味違うんです。これからも大槌の人に驚いてもらい、笑ってもらえるものを作り続けたいです」
(2026年7月取材)

取材、記事:手塚さや香

写真:石川貴子

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