2026.2.18

  • 地域活動

体も心も真剣勝負
快進撃続ける“大槌相撲”

小原道場

道場主の小原祐也さんが恩師たちの遺志を継ぎ、2023年に再スタートした相撲道場。現在は小学生から社会人まで14人が所属。稽古は月・水・金の18時から。場所は寺野地区の大槌町相撲場で、冬季のみ地域の公民館にて実施。「相撲をやってみたい」という子どもたちはもちろん、熱意があれば大人の初心者も歓迎するとのこと。

2026.2.18

  • 地域活動

体も心も真剣勝負
快進撃続ける“大槌相撲”

小原道場

道場主の小原祐也さんが恩師たちの遺志を継ぎ、2023年に再スタートした相撲道場。現在は小学生から社会人まで14人が所属。稽古は月・水・金の18時から。場所は寺野地区の大槌町相撲場で、冬季のみ地域の公民館にて実施。「相撲をやってみたい」という子どもたちはもちろん、熱意があれば大人の初心者も歓迎するとのこと。

「前に、前に出ろ!」。冷たい夜風の吹き込む相撲場に、小原祐也さんの凛とした声が響きます。かつて相撲が盛んだった大槌町で才能を見出され、日本大学相撲部の一員として土俵に立った小原さんが道場主を務める小原道場は、大槌で今一番アツい場所。少年力士たちの燃える闘志もさることながら、数々の大会で優勝・入賞に輝いているのです。稽古の様子を通して、小原さんの相撲人生や道場生たちへの思いを伺いました。

地域超えて切磋琢磨し
躍進する道場生たち

辺りが夕闇に包まれる中、寺野地区にある大槌町相撲場に煌々と明かりが灯ります。「お願いします」の声とともに、小原道場の道場生である子どもたちが続々と集まってきました。稽古は毎週月・水・金の18時から。現在は小中学生を中心に、社会人も含めた14人の道場生が稽古に励んでいます。お隣・釜石市から通っているメンバーや、宮古市のクラブチームからの出稽古(でげいこ)も受け入れており、地域の垣根を超えて切磋琢磨を続けてきました。

お互いに回しを締め合ったり、ストレッチをしたり、子どもたちが自主的に準備を進めていると「挨拶、ちゃんとしろ」と声が響きました。道場主である小原祐也(おばらゆうや)さんです。
「返事と挨拶は礼儀の基本なので、普段から繰り返し教えるようにしています」と、しっかりした口調で話す小原さん。「ふざけたりすると怪我に繋がりますし、こちらも本気で向き合って指導しているので、時には言葉が厳しくなってしまうこともある。身体だけでなく、心と心もぶつかり合いです。親御さんたちも理解してくれていますし、こうした経験から成長していってほしいという思いで、お子さんを道場に通わせてくれているようです」。

土俵の上では、子どもたちが“すり足”の稽古を始めました。上級生たちがリードし、繰り返し土俵を往復していきます。メニューが終わると、竹ぼうきで掃き、じょうろで水を撒いて土俵を整える……。小原さんの指示が無くとも着々と稽古が進んでいく様子は、まさに心身の鍛錬の賜物です。そんな道場生たちの姿を、小原さんは誇らしげに見渡しました。

2024年には、東北大会で優勝した当時の小学4年生が「第37回全日本小学生相撲優勝大会」に出場し、ベスト8に入る快挙を成し遂げました。
2025年7月の「第36回全国都道府県中学生相撲大会」岩手県代表選考会では、出場した道場生2人がともに3位に輝き、大阪府で行われた全国大会へ出場。10月に東京都立川市で行われた「第22回全国少年相撲選手権大会」では、5年生の部でベスト8入り。道場生たちの快進撃は続き、青森県田舎館村が主催する「第21回栃ノ海杯小中学生相撲大会」では、団体戦低学年の部で優勝。個人戦では小学3年生の部の表彰台を独占し、5年生の部でも3位に入賞しました。なんと取材に伺った翌週にも大会を控えているのだとか。小原道場は今日も“大槌相撲”の名を全国に轟かせています。
辺りが夕闇に包まれる中、寺野地区にある大槌町相撲場に煌々と明かりが灯ります。「お願いします」の声とともに、小原道場の道場生である子どもたちが続々と集まってきました。稽古は毎週月・水・金の18時から。現在は小中学生を中心に、社会人も含めた14人の道場生が稽古に励んでいます。お隣・釜石市から通っているメンバーや、宮古市のクラブチームからの出稽古(でげいこ)も受け入れており、地域の垣根を超えて切磋琢磨を続けてきました。

お互いに回しを締め合ったり、ストレッチをしたり、子どもたちが自主的に準備を進めていると「挨拶、ちゃんとしろ」と声が響きました。道場主である小原祐也(おばらゆうや)さんです。
「返事と挨拶は礼儀の基本なので、普段から繰り返し教えるようにしています」と、しっかりした口調で話す小原さん。「ふざけたりすると怪我に繋がりますし、こちらも本気で向き合って指導しているので、時には言葉が厳しくなってしまうこともある。身体だけでなく、心と心もぶつかり合いです。親御さんたちも理解してくれていますし、こうした経験から成長していってほしいという思いで、お子さんを道場に通わせてくれているようです」。

土俵の上では、子どもたちが“すり足”の稽古を始めました。上級生たちがリードし、繰り返し土俵を往復していきます。メニューが終わると、竹ぼうきで掃き、じょうろで水を撒いて土俵を整える……。小原さんの指示が無くとも着々と稽古が進んでいく様子は、まさに心身の鍛錬の賜物です。そんな道場生たちの姿を、小原さんは誇らしげに見渡しました。

2024年には、東北大会で優勝した当時の小学4年生が「第37回全日本小学生相撲優勝大会」に出場し、ベスト8に入る快挙を成し遂げました。
2025年7月の「第36回全国都道府県中学生相撲大会」岩手県代表選考会では、出場した道場生2人がともに3位に輝き、大阪府で行われた全国大会へ出場。10月に東京都立川市で行われた「第22回全国少年相撲選手権大会」では、5年生の部でベスト8入り。道場生たちの快進撃は続き、青森県田舎館村が主催する「第21回栃ノ海杯小中学生相撲大会」では、団体戦低学年の部で優勝。個人戦では小学3年生の部の表彰台を独占し、5年生の部でも3位に入賞しました。なんと取材に伺った翌週にも大会を控えているのだとか。小原道場は今日も“大槌相撲”の名を全国に轟かせています。

子どもたちに伝えるのは
不撓不屈の精神

小原さんが相撲と出会ったのは小学校1年生のとき。当時の大槌町は相撲が盛んで、小学校の校庭にも立派な土俵がありました。初めて出場した町内大会で見事優勝し、当時の相撲道場のコーチから「やってみないか」と誘われ、少年力士となりました。中学では相撲部へ入部して相撲漬けの日々を送っていましたが、2年生のときに東日本大震災が発生。町は壊滅し、稽古の場所や機会を奪われただけでなく、相撲道場のコーチと道場主が犠牲となりました。深い悲しみの中にあっても、小原さんはコーチたちの教えを胸に、相撲への情熱を燃やし続けました。
「被災地の相撲少年たちを支援しようという取り組みの一環で、東京の相撲部屋で稽古をつけてもらったんです。現役力士の皆さんの胸を借り、本当に貴重な経験でした。今でも感謝しています」。
そんな小原さんを目にかけてくれていたのが、青森県の弘前実業高校相撲部の監督でした。大槌町を離れ、監督のもとで3年間の研鑽を積んだ小原さんは、ついに名門・日本大学相撲部の一員として土俵に立ちます。全国から集まった猛者たちと日夜しのぎを削り、結果が出せない苦しさや怪我にも耐え、やがて副主将として40人ものチームメイトを支えるまでになりました。
一方で、競技を続けていくことへの限界を感じ、今後の人生を改めて考え始めた小原さん。頭に浮かんだのは故郷である大槌町のことでした。「親父の仕事を継ぐことも頭にありました。それに『大槌の相撲は、道場はどうなってるんだべ』ってなんだか気になって。大槌町に帰りたくなったんです」。

帰郷後、小原さんは自身が相撲を始めるきっかけをくれたコーチたちの遺志を継ぎ、新たな道場主となることを決意。2023年の春に“小原道場”と名を改めて再スタートさせました。
しかし、当時の道場生はたったの2名。このままではいけないと、他の道場を参考にしてSNSでの発信にも力を入れました。結果を残せるようになると、各地から次々と大会への誘いが舞い込みます。目の前の取組に真摯に向き合い、白星を着々と積み重ねていくうちに、道場生たちも増えていきました。
「道場の復活を聞きつけて『小学生の頃、相撲をやっていた』という親御さんが子どもを連れてきてくれたり、地域に根差した相撲文化に支えられていると思います。やっぱり大槌の人は、相撲が好きなんですよね」。小原さんは照れくさそうに笑いました。
小原さんが相撲と出会ったのは小学校1年生のとき。当時の大槌町は相撲が盛んで、小学校の校庭にも立派な土俵がありました。初めて出場した町内大会で見事優勝し、当時の相撲道場のコーチから「やってみないか」と誘われ、少年力士となりました。中学では相撲部へ入部して相撲漬けの日々を送っていましたが、2年生のときに東日本大震災が発生。町は壊滅し、稽古の場所や機会を奪われただけでなく、相撲道場のコーチと道場主が犠牲となりました。深い悲しみの中にあっても、小原さんはコーチたちの教えを胸に、相撲への情熱を燃やし続けました。
「被災地の相撲少年たちを支援しようという取り組みの一環で、東京の相撲部屋で稽古をつけてもらったんです。現役力士の皆さんの胸を借り、本当に貴重な経験でした。今でも感謝しています」。
そんな小原さんを目にかけてくれていたのが、青森県の弘前実業高校相撲部の監督でした。大槌町を離れ、監督のもとで3年間の研鑽を積んだ小原さんは、ついに名門・日本大学相撲部の一員として土俵に立ちます。全国から集まった猛者たちと日夜しのぎを削り、結果が出せない苦しさや怪我にも耐え、やがて副主将として40人ものチームメイトを支えるまでになりました。
一方で、競技を続けていくことへの限界を感じ、今後の人生を改めて考え始めた小原さん。頭に浮かんだのは故郷である大槌町のことでした。「親父の仕事を継ぐことも頭にありました。それに『大槌の相撲は、道場はどうなってるんだべ』ってなんだか気になって。大槌町に帰りたくなったんです」。

帰郷後、小原さんは自身が相撲を始めるきっかけをくれたコーチたちの遺志を継ぎ、新たな道場主となることを決意。2023年の春に“小原道場”と名を改めて再スタートさせました。
しかし、当時の道場生はたったの2名。このままではいけないと、他の道場を参考にしてSNSでの発信にも力を入れました。結果を残せるようになると、各地から次々と大会への誘いが舞い込みます。目の前の取組に真摯に向き合い、白星を着々と積み重ねていくうちに、道場生たちも増えていきました。
「道場の復活を聞きつけて『小学生の頃、相撲をやっていた』という親御さんが子どもを連れてきてくれたり、地域に根差した相撲文化に支えられていると思います。やっぱり大槌の人は、相撲が好きなんですよね」。小原さんは照れくさそうに笑いました。

町を相撲で盛り上げ、
いつか「大槌から関取を」

“ぶつかり稽古”が終わる頃には、相撲場の中は土の匂いが濃くなっていました。いよいよ稽古は実戦形式へ。回しを締めた小原さんが土俵の脇に立つと、空気がピリッと変わります。
まだ相撲を始めたばかりの子どもたちは、相手と呼吸を合わせて土俵に両手をつく“立ち合い”の稽古から。小原さんやコーチが「いいぞ、がんばれ」と励ましながら、何度も繰り返し練習を行っていました。
大会入賞経験のある小学生同士ともなると、大人顔負けの迫力。体格差があるように見えても、足を武器に相手を振り回すなど、それぞれの強さや負けん気が光ります。「回れ、回れ!」「前に!前に!」と、小原さんの指導にも熱が入ります。
夜が深まるにつれ、この日は冬の気配を感じさせる冷え込み。道場生たちの身体から湯気が立ち上ります。冬季の稽古は地域の公民館で行うため、足の裏で土俵を感じられる機会は残り僅か。土俵に入る順番を待つ間も惜しむように、道場生たちは四股を踏み、ライバルでもある仲間の取組の行方を真剣に見つめていました。

「町の人から『やってるな』『がんばってるな』と声をかけられることも増えました。引き続き、子どもたちを応援してほしいです」と、力強く語る小原さん。
昨年の大会遠征の折には、大学時代のチームメイトである幕内力士を子どもたちとの食事会に招くなど、貴重な経験の場を設けることができました。
「食事会のあと、子どもたちの相撲に対する熱量がガッと変わったんです。『将来は幕内力士になりたい』と話す子も出てきて、テレビや動画からは得られない現実味みたいなものが伝わったのかなと。これからも自身の経験や繋がりを活かし、できることは全てやっていきたい。それが、今まで支えてくれた皆さんへの自分なりの恩返しだと思っています」。
そんな小原さんも、土俵を離れれば二人の女の子のパパ。休日は娘さんたちと釣りを楽しんだり、秋の大槌まつりでは一家で虎舞に参加するなど、家族と過ごす時間も大切にしています。5歳になる上の娘さんは、なんと最近、小原道場の道場生になったのだとか。女子相撲は年々注目度が上がっているそうですが、大槌町ではまだ競技人口が少なく、この日も男の子たちに交じって相撲をとっていました。

道場の今後の目標を伺うと、小原さんは「大槌を相撲で盛り上げたい、とかですかね」と、笑顔で腕を組みました。「道場生たちの活躍を通して明るい話題をいっぱい届けて、町の人に喜んでもらいたい。そしてゆくゆくは、大槌町から関取を出したいです」。
子どもたちの夢と闘志を全力で受け止めながら、小原道場の挑戦は続きます。
(2025年10月取材)
“ぶつかり稽古”が終わる頃には、相撲場の中は土の匂いが濃くなっていました。いよいよ稽古は実戦形式へ。回しを締めた小原さんが土俵の脇に立つと、空気がピリッと変わります。
まだ相撲を始めたばかりの子どもたちは、相手と呼吸を合わせて土俵に両手をつく“立ち合い”の稽古から。小原さんやコーチが「いいぞ、がんばれ」と励ましながら、何度も繰り返し練習を行っていました。
大会入賞経験のある小学生同士ともなると、大人顔負けの迫力。体格差があるように見えても、足を武器に相手を振り回すなど、それぞれの強さや負けん気が光ります。「回れ、回れ!」「前に!前に!」と、小原さんの指導にも熱が入ります。
夜が深まるにつれ、この日は冬の気配を感じさせる冷え込み。道場生たちの身体から湯気が立ち上ります。冬季の稽古は地域の公民館で行うため、足の裏で土俵を感じられる機会は残り僅か。土俵に入る順番を待つ間も惜しむように、道場生たちは四股を踏み、ライバルでもある仲間の取組の行方を真剣に見つめていました。

「町の人から『やってるな』『がんばってるな』と声をかけられることも増えました。引き続き、子どもたちを応援してほしいです」と、力強く語る小原さん。
昨年の大会遠征の折には、大学時代のチームメイトである幕内力士を子どもたちとの食事会に招くなど、貴重な経験の場を設けることができました。
「食事会のあと、子どもたちの相撲に対する熱量がガッと変わったんです。『将来は幕内力士になりたい』と話す子も出てきて、テレビや動画からは得られない現実味みたいなものが伝わったのかなと。これからも自身の経験や繋がりを活かし、できることは全てやっていきたい。それが、今まで支えてくれた皆さんへの自分なりの恩返しだと思っています」。
そんな小原さんも、土俵を離れれば二人の女の子のパパ。休日は娘さんたちと釣りを楽しんだり、秋の大槌まつりでは一家で虎舞に参加するなど、家族と過ごす時間も大切にしています。5歳になる上の娘さんは、なんと最近、小原道場の道場生になったのだとか。女子相撲は年々注目度が上がっているそうですが、大槌町ではまだ競技人口が少なく、この日も男の子たちに交じって相撲をとっていました。

道場の今後の目標を伺うと、小原さんは「大槌を相撲で盛り上げたい、とかですかね」と、笑顔で腕を組みました。「道場生たちの活躍を通して明るい話題をいっぱい届けて、町の人に喜んでもらいたい。そしてゆくゆくは、大槌町から関取を出したいです」。
子どもたちの夢と闘志を全力で受け止めながら、小原道場の挑戦は続きます。
(2025年10月取材)

取材、記事:横濱千尋

写真:石川貴子

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運営:一般社団法人 おらが大槌夢広場 / 大槌町移住定住事務局

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